窮鼠はチーズの夢を見る/ネタバレありかも

窮鼠はチーズの夢をみる

今、大倉忠義主演の映画で話題になっているこの作品のCDについて、話していきたいと思います。 

かなり話題になっている作品で、様々なサイトであらすじ紹介などが成されているので、ドラマCDとしての魅力を中心に記します。

 

BLCD化は2006年!

現在実写映画が公開されている「窮鼠」。はじめてBLCD化されたのは2006年と、10年以上昔です。その後少し時間を置いて(数年間くらい)、話しの後編となる「俎上の鯉は二度跳ねる」が出されています。

 

この記事では、その二つのCDを「窮鼠」というひとつの作品として、まとめて扱います。

 

中村悠一さんの「恭一」

CDでは、主人公の恭一を中村悠一さんが演じ、相手役となる今ヶ瀬を遊佐浩二さんが演じています。

後に「世界一初恋」をはじめとする様々なBLCDに出演される中村さん。中村さんが出演しているBLCDを前期・中期・後期に分けるとすると、このCDはちょうど中期の初めにあたると思います。

これ以前の作品では、「絡み」のシーンがイマイチルーティーン的(どの作品でも同じような演技になっているように感じること)になっていたりすることがよくありましたが、この作品あたりから少しずつ、それがなくなってきます。

 

また、「窮鼠」の恭一といえば、「悪気はないのに人(女の子)を傷つける」という憎たらしい面を持ちつつ、さりげない言動で周囲の人を惹きつけてしまうような魅力があるキャラクター。

それが中村さんの声でばっちりと出ています。

普段、主人公やヒーローキャラを多く演じている(いた)中村さん。当たり役としか言いようがありません。

 

 

遊佐浩二さんの「今ヶ瀬」

一方で、相手役の遊佐浩二さん。

あらためてBLCDへの出演歴をみると、「窮鼠」はまだまだ初めの方の出演作なのかなと思ってしまいますが、とはいえ「窮鼠」での絡みのシーンなどでの違和感はほとんどなかったと記憶しています。

 

映画を見た方はきっと、なりたさんの「今ヶ瀬」の、じっとりした女性的な、かわいらしさや美しさすらも感じる「今ヶ瀬」が忘れられないことでしょう(о´∀`о)

そういう方には、遊佐さんの「今ヶ瀬」は、すこし、あっさりしているように感じられるかもしれません。

 

遊佐さんの「今ヶ瀬」は、もうすこしだけ「男」の要素が入っています。

だからこそ、

今ヶ瀬が「恭一」を”上”からどんどん追い詰めていき、恭一がどんどん追い詰められていく構図と、今ヶ瀬に惹かれていく「恭一」の焦り(「俺って、女の子好きだよね、、好きだよね…?!」というような感情)が、映画よりくっきりと演出されています。

 

だからこそ、後半にかけての畳みかけがとても効果的に作用してきて、今ヶ瀬や女性キャストに感情移入して聞いていると、かなり心に刺さる作品となっています。

 

 

BLCD作品としての「窮鼠」(ここはほんとにただの私見

背景音の妙技

 

 BLCD作品としての「窮鼠」の見どころは、豪華なキャストさんだけではありません。

お芝居の背景の「音」も注目です。

 

例えば前半、今ヶ瀬と恭一の会話でスピーディーに話が進んでいきます。

クスっと笑えてしまうような”タイミング芸”ともとれる演出も入っていたりして、後半の、腹の探り合いや駆け引きといった展開とは対照的に、すっきりと、比較的気軽な気持ちで聞けます。。

 

そんな「気軽さ」を支えているのが、「BGM」です。

今ヶ瀬が恭一を追い詰められているような、一見シリアスなシーンのBGMに、あえて軽い、ひょうきんなミュージックが使われています。

音楽の雰囲気が話をまとめ、引っ張っていってくれているのです。

 

その一方で、後半。シリアスなシーン、大切なシーンでは環境音が印象的に使われています。

例えば、駆け引きと探り合いの末に今ヶ瀬と恭一の思いが強くぶつかるシーン(映画にはないラストシーンです)。

ここでは雨の環境音が強めに使われており、自然と二人の会話にリスナー側が惹き込まれるようになっています。

 

だからなんだということはありませんが、BLCDを聞くうえで、ちょっとおもしろい着眼点として、ここに記しておきます。

 

 

「絡み」で描かれる人間関係

もうひとつ、「窮鼠」について記しておきたいのが、「絡み」のシーンのつかいかたについて。 

 

「絡み」とは、いわゆるセックスシーンのこと。

映画を見た方は予想がつくと思いますが、「窮鼠」はBLCDのなかでも比較的「絡み」が多い作品です。よって、初心者の方には、積極的にはおすすめできません。

 

が、「窮鼠」は「絡み」の扱いが非常に特徴的な作品です。

 

「絡み」のシーンが何度も流れる作品は、ほかにもごまんとあります。しかし、その絡みのシーンをつかって登場人物の関係性を描き出す作品は、なかなかありません。

 

この「絡み」による関係性の演出は映画でも描かれているので(←だからR15)、映画を鑑賞する際にも、気を付けてみてみると面白いと思います。

 

 

さいごに~「窮鼠」という作品についてのまとめ~

「窮鼠」がBL作品のなかでも特異な点は、人間の「エゴ」がくっきりと描かれていることだと思っています。

 

恋愛ものといえば、パートナーのための何らかの自己犠牲的な行動が、視聴者や読者の感動を呼ぶものだと思います。

たとえば、不治の病にかかったヒロインのために、自分の長年の夢を犠牲にしてまで付き添い続ける相手役とか。。典型的な展開ですが。。相手役の献身的な姿勢=自分の長年の夢をあきらめてまでヒロインに付き添おうという自己犠牲的な行動に、感動するのではないでしょうか。

その構図は他の多くのBL作品においても変わりありません。

 

しかし、「窮鼠」はちがいます。

 

みんな、「エゴ」がいっぱい。たとえば…

「私をもっと愛してほしい。」「自分だけをみてほしい。」「周りの人に変な目でみられたくない」「相手にもっとイイところをみせたい」「あいつより私の方が優れていると証明したい、確認したい」

みたいな。

登場人物たちは、こういったエゴを隠そうともしません。ぎりぎりまで自分のエゴを押し通しつつ、望む結果をかなえる方法がないかと足掻き続ける。

 

言い換えれば、みんな人間臭いのです。

 

だから、ほかの恋愛作品にはないリアリティがあり、感動があります。

 

 

いわゆる「絡み」(=セックスシーン)が多い作品なので、BLCD初心者の方に堂々とおすすめできる作品とは言えませんが、ストーリー展開と言い、様々な演出と言い、非常に作り込まれた作品です。

 

興味が出た方はぜひ、鑑賞してみてください♪

 

 

amzn.to