テンカウント/ネタバレありかも
テンカウント
今回は、ファン・読者も多く、幅広いメディア展開を今まさに進めている作品、「テンカウント」をまとめます。
潔癖症で内気×無口で不愛想な臨床心理士
隠せない戸惑い
主人公は潔癖症の社長秘書「城谷」は、ひょんなことから、無口で不愛想な臨床心理士「黒瀬」と知り合う。
なんとなく腹の読めない「黒瀬」に警戒しっぱなしの「城谷」に対して、(「城谷」に一目ぼれしてる…?)「黒瀬」は、”エクスポージャー”という潔癖症の治療に付き合うことを提案する。
エクスポージャーとは、自分が「できそうにないこと」をリストアップし、それを簡単なものから一つづつ実行していくことで、潔癖症の症状改善を図る治療方法のこと。
「黒瀬」は、体調が悪くなりやすい「城谷」を支えながら、リストアップされた10個の項目をこなしていく手伝いをしつつ、「城谷」への思いを募らせていた。
少しずつ症状が改善され、リストにある項目ができるようになっていくことを喜ばしく思いつつも、着々と自分の中で大きくなっていく「黒瀬」への思いに、戸惑いを隠せない「城谷」。
(ここまでが【テンカウント1】)
諦めない「黒瀬」。そして、少しずつ縮まる距離。。。
互いの思いがうまく通じず、しばらく苦しい思いをする二人だったが、「城谷」が大きく体調を崩したことをきっかけに再び歩み寄り、自分の思いを整理して伝えなおすことが出来た。
その後も二人でリストの内容を一つづつこなしていく中で、次第に二人の心の距離は近づいていく。
そして遂に、我慢の限界を迎えた「黒瀬」によって、2人は一線を越えかける。
だんだんと隙を見せてくるようになった「城谷」の側に居続けることで、衝動に自制をかけなくなっていく「黒瀬」。
一方で、自分が「黒瀬」に対して抱いてる感情にも、それに従って自分の中で生まれてくる衝動にも対応できず戸惑う「城谷」。
すれ違いそうになることもあるものの、諦めず攻めの姿勢を貫く「黒瀬」によって、2人の距離は少しづつ接近していく。
「黒瀬」との関係性が「友人」から「恋人」に変化していく中で、「城谷」は自分の新たな一面に気付いていき、少しずつ肯定的な性格になっていく。
同時に、「城谷」の潔癖症の本質的な部分が見え始める。
(ここまでが【テンカウント2と3】)
2人が抱えていた過去…そして未来へ
【テンカウント4】【テンカウント5】ではそれぞれ、2人の過去が語られます。
そんな中で、「城谷」がなぜ潔癖症になったのか、「黒瀬」が不愛想で無口だったのはなぜか(そして、なぜ臨床心理士になったのか)が明らかになってきます。
また、4・5巻になると絡みのシーンも増えてきます。
ぐいぐいと押してくる一方で、「城谷」への思いやりが如実に感じられる「黒瀬」と、少しずつ心の壁を崩されていくことに戸惑いながらも、「黒瀬」に少しずつ心を許していく「城谷」。
2人の距離感が声色からだけでも伝わってくる4・5巻の絡みのシーンは、間違いなく見どころと言えるでしょう。
まとめ
テンカウントの特徴は、どっしりとしていても、「どろどろ」とはしていない、独特のストーリー構成にあり、「城谷」役の立花さんと「黒瀬」役の前野さんの、決していやらしくない「声」のお芝居が、それを後押ししています。
絡みのシーンがそこそこしっかりあるので「はじめて」の方にはお勧めできません。
しかし、この作品に満ち溢れている優しさは、心にしみわたるようなところがあります。
みんなが優しい。みんなが温かい心を持っている。そんな作品です。
勘弁してくれ/ネタバレあり
勘弁してくれ
今回扱うのはBLCD作品「勘弁してくれ」。
初版2009年の、これまた古めの作品。(←とはいえ、これくらいの時期がBLCDの黄金期感あります…一番作品が多い時期だという気がする)
メディア化も進んでいない作品なので、中身に触れつつ、記していきます。
「一夜の相手」かと思いきや…
あらすじです。
主人公はアパレル会社の現場でサービス業に従事する「慎一」(演:近藤隆)。
「慎(つつましい)」の字に反して、その性生活は、色々な男性をとっかえひっかえして遊び歩くという、わりと緩い感じ。
忙しい日々の中で、仕事のストレスを吹っ切るためにも気軽に遊びまわりたいという性格です。
話は、「慎一」が、同僚の恋人「羽賀さん」と別れ話をする場面からはじまります。
予想外にこじれてしまった別れ話を終わらせるために「慎一」が当て馬として使ったのが、後の「慎一」お相手となる「義祟」(演:鈴木達央)でした。
その場の会話だけで関係を済ませようとする「慎一」でしたが、「義祟」の男らしい声と容姿に惹かれていき、ついにはその場で関係を持ってしまいます。
行為の最中、自分を少し手荒に扱ってくる(でも上手い)「義祟」の調子にテンポを乱され、戸惑いながらも、どうせ一夜の関係と割り切っていた「慎一」。
しかし、この「義祟」、実は「慎一」が幼いころからよく面倒を見ていた、年下のはとこだったのです…。
大学進学とともに上京した「義祟」は「慎一」の元に度々上がり込むものの、「慎一」に対して”年下のはとこ”として接します。そんな「義祟」に、めんどくさそうに対応しつつも、さりげない色気や男らしさに、次第に心から惹かれていく「慎一」。
しかし、人知れず恋心を燃やしていく「慎一」からみると、「義祟」の態度は少し素っ気なくて…。
一方で、実は「慎一」に面倒を見てもらっていた小学生時代から「慎一」に”そういう意味で”思いを寄せていた「義祟」。表にはあまり出さないものの、「慎一」もはや狂気…?!
安心してください。ハッピーエンドです。
BLCD作品、「勘弁してくれ」について
”絡み”少なめ。初心者にはイイけど…
主人公「慎一」のモノローグで話が進んでいく今作。
軽快な進み方と比較的ライトな展開で、気軽に聞くことが出来る作品だと思います。
絡みも、1時間作品(1時間で完結するBLCD)によくある2回と多くないので、ヘビーな展開や激しい絡みの連続になれない方には、とてもおすすめな作品です。
また、この作品で「攻め」側を演じているのが、鈴木達央さんなので、「攻めの王道を一度は味わいたい」という方にもおすすめです。
とはいえ、”ガッツリ系”の「慎一」役、近藤隆さん
「絡み」が少ないため初心者向けと書きましたが…「受け」役の近藤さん、けっこうガッツリ甘い声を出していらっしゃいます。。
”女帝”…とまではいけませんが、かなり気合の入ったお芝居でしたね。。。喉が辛そう。
シチュエーションCDでもお馴染み。もはや王道?!「義祟」役、鈴木達央さん
爽やかなルックスでもお馴染みの鈴木達央さん。
でも(勝手なイメージですが)、攻めるときはかなりじっとりと攻める役が多いイメージがあります。甘い声で囁いて、相手を追い詰めていくような感じのセリフが多い感じがする。
そんな(私の勝手な)イメージにぴったりはまっていたのが「義祟」でした。
年下のはとことして「慎一」に甘えて見せたり、少年のように奔放で快活な感じをアピールする一方で、ふとした場面で男としての頼もしさを醸し出し、ベッドの中ではねちねち攻めていくという。
私的には、すごく鈴木さんのイメージに合っていて、楽しく聞けました♪
初心者にもおすすめ!ライトで王道な展開
ライトで王道というと安っぽく聞こえてしまうかも知れませんが、お二人のお芝居の掛け合いが心地よく、リズムもよく。聞いていて心地よい作品となっています。
初心者の方、気軽BLを楽しみたい方にすごくお勧めな作品です。
おたのしみに♪
窮鼠はチーズの夢を見る/ネタバレありかも
窮鼠はチーズの夢をみる
今、大倉忠義主演の映画で話題になっているこの作品のCDについて、話していきたいと思います。
かなり話題になっている作品で、様々なサイトであらすじ紹介などが成されているので、ドラマCDとしての魅力を中心に記します。
BLCD化は2006年!
現在実写映画が公開されている「窮鼠」。はじめてBLCD化されたのは2006年と、10年以上昔です。その後少し時間を置いて(数年間くらい)、話しの後編となる「俎上の鯉は二度跳ねる」が出されています。
この記事では、その二つのCDを「窮鼠」というひとつの作品として、まとめて扱います。
中村悠一さんの「恭一」
CDでは、主人公の恭一を中村悠一さんが演じ、相手役となる今ヶ瀬を遊佐浩二さんが演じています。
後に「世界一初恋」をはじめとする様々なBLCDに出演される中村さん。中村さんが出演しているBLCDを前期・中期・後期に分けるとすると、このCDはちょうど中期の初めにあたると思います。
これ以前の作品では、「絡み」のシーンがイマイチルーティーン的(どの作品でも同じような演技になっているように感じること)になっていたりすることがよくありましたが、この作品あたりから少しずつ、それがなくなってきます。
また、「窮鼠」の恭一といえば、「悪気はないのに人(女の子)を傷つける」という憎たらしい面を持ちつつ、さりげない言動で周囲の人を惹きつけてしまうような魅力があるキャラクター。
それが中村さんの声でばっちりと出ています。
普段、主人公やヒーローキャラを多く演じている(いた)中村さん。当たり役としか言いようがありません。
遊佐浩二さんの「今ヶ瀬」
一方で、相手役の遊佐浩二さん。
あらためてBLCDへの出演歴をみると、「窮鼠」はまだまだ初めの方の出演作なのかなと思ってしまいますが、とはいえ「窮鼠」での絡みのシーンなどでの違和感はほとんどなかったと記憶しています。
映画を見た方はきっと、なりたさんの「今ヶ瀬」の、じっとりした女性的な、かわいらしさや美しさすらも感じる「今ヶ瀬」が忘れられないことでしょう(о´∀`о)
そういう方には、遊佐さんの「今ヶ瀬」は、すこし、あっさりしているように感じられるかもしれません。
遊佐さんの「今ヶ瀬」は、もうすこしだけ「男」の要素が入っています。
だからこそ、
今ヶ瀬が「恭一」を”上”からどんどん追い詰めていき、恭一がどんどん追い詰められていく構図と、今ヶ瀬に惹かれていく「恭一」の焦り(「俺って、女の子好きだよね、、好きだよね…?!」というような感情)が、映画よりくっきりと演出されています。
だからこそ、後半にかけての畳みかけがとても効果的に作用してきて、今ヶ瀬や女性キャストに感情移入して聞いていると、かなり心に刺さる作品となっています。
BLCD作品としての「窮鼠」(ここはほんとにただの私見)
背景音の妙技
BLCD作品としての「窮鼠」の見どころは、豪華なキャストさんだけではありません。
お芝居の背景の「音」も注目です。
例えば前半、今ヶ瀬と恭一の会話でスピーディーに話が進んでいきます。
クスっと笑えてしまうような”タイミング芸”ともとれる演出も入っていたりして、後半の、腹の探り合いや駆け引きといった展開とは対照的に、すっきりと、比較的気軽な気持ちで聞けます。。
そんな「気軽さ」を支えているのが、「BGM」です。
今ヶ瀬が恭一を追い詰められているような、一見シリアスなシーンのBGMに、あえて軽い、ひょうきんなミュージックが使われています。
音楽の雰囲気が話をまとめ、引っ張っていってくれているのです。
その一方で、後半。シリアスなシーン、大切なシーンでは環境音が印象的に使われています。
例えば、駆け引きと探り合いの末に今ヶ瀬と恭一の思いが強くぶつかるシーン(映画にはないラストシーンです)。
ここでは雨の環境音が強めに使われており、自然と二人の会話にリスナー側が惹き込まれるようになっています。
だからなんだということはありませんが、BLCDを聞くうえで、ちょっとおもしろい着眼点として、ここに記しておきます。
「絡み」で描かれる人間関係
もうひとつ、「窮鼠」について記しておきたいのが、「絡み」のシーンのつかいかたについて。
「絡み」とは、いわゆるセックスシーンのこと。
映画を見た方は予想がつくと思いますが、「窮鼠」はBLCDのなかでも比較的「絡み」が多い作品です。よって、初心者の方には、積極的にはおすすめできません。
が、「窮鼠」は「絡み」の扱いが非常に特徴的な作品です。
「絡み」のシーンが何度も流れる作品は、ほかにもごまんとあります。しかし、その絡みのシーンをつかって登場人物の関係性を描き出す作品は、なかなかありません。
この「絡み」による関係性の演出は映画でも描かれているので(←だからR15)、映画を鑑賞する際にも、気を付けてみてみると面白いと思います。
さいごに~「窮鼠」という作品についてのまとめ~
「窮鼠」がBL作品のなかでも特異な点は、人間の「エゴ」がくっきりと描かれていることだと思っています。
恋愛ものといえば、パートナーのための何らかの自己犠牲的な行動が、視聴者や読者の感動を呼ぶものだと思います。
たとえば、不治の病にかかったヒロインのために、自分の長年の夢を犠牲にしてまで付き添い続ける相手役とか。。典型的な展開ですが。。相手役の献身的な姿勢=自分の長年の夢をあきらめてまでヒロインに付き添おうという自己犠牲的な行動に、感動するのではないでしょうか。
その構図は他の多くのBL作品においても変わりありません。
しかし、「窮鼠」はちがいます。
みんな、「エゴ」がいっぱい。たとえば…
「私をもっと愛してほしい。」「自分だけをみてほしい。」「周りの人に変な目でみられたくない」「相手にもっとイイところをみせたい」「あいつより私の方が優れていると証明したい、確認したい」
みたいな。
登場人物たちは、こういったエゴを隠そうともしません。ぎりぎりまで自分のエゴを押し通しつつ、望む結果をかなえる方法がないかと足掻き続ける。
言い換えれば、みんな人間臭いのです。
だから、ほかの恋愛作品にはないリアリティがあり、感動があります。
いわゆる「絡み」(=セックスシーン)が多い作品なので、BLCD初心者の方に堂々とおすすめできる作品とは言えませんが、ストーリー展開と言い、様々な演出と言い、非常に作り込まれた作品です。
興味が出た方はぜひ、鑑賞してみてください♪